ユニクロとジェイ ダブリュー アンダーソンの協業ライン“ユニクロ アンド ジェイ ダブリュー アンダーソン”の春夏コレクションの発売を4月20日に控え、デザイナーのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が来日会見を行った。俳優志望だった長身のジョナサンは、シンプルなカットソーにチノパンというラフなスタイルで、春の日差しがまぶしいアンダーズ東京のルーフトップに登場。クラシックの重要性や、服ではなく着る人の個性が出る地に足がついた普段着の重要性などについて語った。
昨秋に続く2度目のコラボは英国の“夏の象徴”として知られる“ブライトンビーチ”がインスピレーション源だ。「自分自身のパーソナルな思い出を詰め込んだもので、ほとんどのアイテムを買うと思う」「(自身が手掛ける)『ロエベ(LOEWE)』や『ジェイ ダブリュー アンダーソン』とは表現の仕方は違うが、同じレベルの注力をした」と取り組みを振り返る。さらに、デジタル化やSNSなどで情報過多の時代にあって、「あえて90年代のフィルムで撮影したような、色あせたカラーリングにしてアナログの良さを表現したかった」と加える。
また、徹底して普段着を追求したといい、「この2年、“ノーマリティー(普通らしさ、普段らしさ)”を表現したいと考えてきた。ファッションは今、スタイル志向になりすぎている。デニム、Tシャツ、オックスフォードシャツなどのベーシックなアイテムを古典の範囲の中でいかにひねるかを考えてきた。ノーマリティーとは、朝、何も考えずに着るクローゼットの中にある絶対的な服のことで、黒、ネイビー、白のシャツやジャケットなど、自分のベースとなる服のことだ。それに天候や休日の外出先などの要素を加えて自分を開放している」と説明する。
「ユニクロ」については、「毎日着て、素晴らしいと言い続けてきた」といい、今回の協業の意味として、「これだけ世界規模のプロジェクトを初めて手掛けることができた。自分にはファッションの民主化に対して強い思いがある。服は限られた人のためのものではなく、“インクルーシブ”なものであるべき。自分のブランドなどでは高額になりがちなもののリーズナブルに提供できるのがすばらしいし、さまざまなブランドとも合わせられ、いろんなルックに使えて、自分らしさを表現できる服だ」と評価する。
さらに、「服は着る人のものであって、着る人が息吹を吹き込むものだ。ブランドが自分を表現するのではない。僕自身、ラウドネスではなく、普通で堂々としていられるものを着て、地に足をつけていたいと思う。華美にすると本当の自分が見えなくなる。クラシックなシャツを着るからこそ、個性が際立つものだと思う」と、自身のスタンスを語った。
ちなみに、日本については「若いころから日本の工芸に魅力を感じてきた。一見地味に見えるが、伝統をベースに洗練させながら次世代に引き継ぐ在り方に魅了されてきた」とコメント。「年に1回ほど来日するが、東京が大好きで、つい買い物しすぎてしまう」とも明かした。
ファーストリテイリンググループ執行役員でデザイナーズコラボを監修する勝田幸宏ユニクログローバルR&Dは「英国やヨーロッパでは、生活や仕事の必要の中から服が生まれ、スポーツなども含めてオリジナルの服がある。われわれは“LifeWear”、人々の生活のための服を作る中で、服の歴史をインベントするものを作るのに、今まで付き合いのなかった英国のデザイナーと組みたいと考えていた。世界で活躍している彼しかいなかった。ジョナサンに忙しいといって断られていたら、誰ともやっていなかったと思う。偉大な英国デザイナーと組んだことで、歴史のある機能についても気付かされたことがある。これまで50年、100年続いてきた服を、われわれとジョナサンとで、5年、10年着られる服にしたかったし、それができた。今まで知らなかった服の歴史や文化を再認識しながら、服作りができたのが素晴らしかった」と振り返る。